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「デジタルストレス王」 November  02, 2004 我が家壊滅
鐸木能光

頼りになるのは報道機関からの情報なのだが、まず、テレビはまったく役に立たないということが分かった。
「絵(映像)」として視聴者の心情に訴えやすいものばかり追いかけている。知りたい情報はほとんど届かない。
今映っている場所の正確な住所を表示してくれない。
孤立している地域がありますと言いながら、その地域の名前を言わない。
避難が完了したようですと言いながら、避難所の場所を言わない。
どこかが何かを報道すると、他のメディアもわっとそれに群がる。
3日目くらいには、山古志村が「悲劇の村」として報道の中心になっていた。一旦そうなると、山古志村に報道陣が殺到し、より衝撃的な映像を配信しようという競争になる。
新幹線の脱線現場や道路の崩落現場は何度も何度もしつこく映し出されるのに、被災者がどこに避難しているのか、被災地のどこがどういう被害を受けているのか、正確な情報がほとんど届かない。現地に土地勘がある人間にとって、これほど歯がゆいことはない。

お隣の長野県などは、田中知事がこういうときこそ能力をアピールするチャンスなのに、県のサイトを見る限りでは、支援物資を送るというような情報だけで、被災者を受け入れる具体的対策が遅れたように思う。

前日の夜に起きた地震の後、すぐに飛行機を手配し(自衛隊国土地理院所有の専用機があるらしい。飛行機は地理院のものだが、パイロットは自衛隊員だとか)、一夜明け、日が昇ると同時に空撮している。その写真をすぐにまとめて、翌日にはWEBでも一般公開しているのだから、その迅速さに改めて驚くばかりだ。恐るべし国土地理院

同時に、我が家が崩壊していること、村そのものが消えゆく運命にありそうだということを知らされる。

どの家もとても住めたものではない。建て直すにしても冬までには到底間に合わない。除雪車も入れないだろうから、この冬は集落を見捨てるしかない。そうなれば、今なんとか形を保っている家も雪に押しつぶされる。
一晩で1m積もることもある豪雪地帯。この地方の人たちは「雪下ろし」ではなく「雪掘り」と言う。一階の屋根や庇は雪より下になるため、雪を下ろすというよりは雪を掘り下げて家と切り離すという感じなのだ。
この切り離しがうまくいかないと、雪解けのとき、庇や軒が雪に引っ張られて壊れる。我が家も何度か経験しているが、雪の力はものすごい。
それをみんな知っているから、今から完全に諦めているのだ。

今22戸ある我が集落は、おそらく消えてしまう。家を建て直すだけの資金がある人はほとんどいないだろう。老人が多いから、30年ローンなんていう話は現実味がない。あの世でローンを払い続けるわけにはいかないもの。
老人たちは、残った人生を、生まれ育った自然の中で静かに過ごせることが幸せだった。


昨晩のTBSラジオ「アクセス」での月曜日のコメンテターの田中康夫長野県知事の発言は

  • 直接、長野県職員を現地への派遣
  • 保養施設への被災者の受け入れを検討

を行っているとのことです。
私は長野県などのサイトで確認はしていないのですが。